第一回:作る前から伸びている者たち
草原に双眼鏡を向けてみたら、おった。
ようさんおった。
オカンがXのタイムラインという名の草原を、そっと覗いてみたんよ。お目当ては「#個人開発」タグ。AI時代の新しい作り手たちの生態を観察しようと思てな。
……いやびっくりしたわ。
アプリを作っている人。作っていた人。作っている「感」を醸し出してる人。作る前からものすごい勢いで伸びている人。
草原には、思てたよりずっと豊かな生態系ができとった。
ひとつ言うとくと、オカンは個人開発を馬鹿にしたいわけとちゃう。むしろ逆や。ひとりで考えて、作って、出して、改善する。大企業が見向きもしない小さな不便を解消できるし、AIのおかげで入口が広がったのも、ええ流れやと思う。
でもな。
ちょっとだけ、草原の様子がおもろいことになっとる。「作る力」より先に「伸ばす作法」だけが発達している生き物たちが、そこらじゅうに生息しとるんよ。
今日はそいつらを、愛情を込めて紹介しよか。
※この記事は特定の個人を攻撃するものではなく、SNS上で見かける「しぐさ」や「構文」を観察したものです。
🗺️ サファリパークの住民たち
🦚 インプ孔雀

成果物より先に、Xアナリティクスという羽根を広げる。「10万インプ達成🔥」「もっと伸びてほしいのでRTお願いします」と鳴きながら存在感を示す。
巣(プロダクト)を作る前に羽根(バズツイ)を広げる。順番が逆や。
天敵は「で、それどこで使えるんですか?」の一言。絶滅危惧種になる速度で消える。
オカンより: インプは通貨やないで。ユーザーが払うんは金と時間や。
🦍 MVPゴリラ

「まず作れ!考えすぎるな!完璧主義をやめろ!」と叫ぶ。これ自体は正しいこともある。ただ、誰が使うのか、なぜお金を払うのか、そのへんはまだ「森の奥」にある。
Xで誰かが「検証」の話をすると「動いてから考えろ」とリプしてくる。天敵は「ユーザーインタビューしましたか?」。
オカンより: 作ることと届けることは別の筋肉やで。
🐒 Build in Publicサル

なんでも公開する。進捗、失敗、数字、自分の画面。……そして、他人の画面も。
コワーキングスペースで隣の開発者のモニターを背後から撮影して、中身が丸見えのままSNSに投稿する個体がおる。キャプションは「すごい人がいた!!」。本人への確認はゼロ。業務秘密も個人情報も著作権も、全部スルー。「映え」より先に、相手の許可や。
これだけは笑えへんから、はっきり言う。
オカンより: 人の作業をコンテンツにする前に一声かけや。それ、人間の最低限やで。
🦝 無料体験版たぬき

「無料で試せます!」という声に引き寄せられて近づくと、中身は2語を混ぜたコンセプトやったりする。将来的にはリリース版の気配だけある。β版は永遠に更新されない。「有料版はいつ出ますか?」が来ると冬眠に入る。
オカンより: 無料は価値や。タダは餌や。自分がどっちか、考えてみ。
🥷 RSI忍者

海外論文の巻物を颯爽と持ってくる。「AIが自分自身を改善!」と唱えながら最新トピックを草原に投下する。翻訳と拡散が得意。ただし、非常停止やアライメントの話になると煙玉を焚いて消える。翌日にはまた別の巻物を持ってくる。
オカンより: 拡散する前に読んだか? 読んだなら、説明できるはずや。
🦁 フィードバック無双ライオン ※新発見種

これが最近オカンが目撃した、新種の猛獣や。
告知ツイートが約100万表示、95いいね。「人生初アプリ公開します!」で草原が沸いた。……で、公開したら10いいね。
「どうして告知が95いいねで公開したら10いいねなんだろう!?」と嘆いたその瞬間、ユーザーから5連コンボが飛んできた。
「見た目ダサい」「スマホで使えない」「似たアプリある」「幅とりすぎ」「音いらん」。
ライオンの返答は——「たまたま他と似てただけじゃないすかね??」の一点のみ。残り4つはなかったことになっとる。ダメージ計算式が独自実装されとる。
でもな。出したやん。転んだやん。それだけで、出してない人より100倍偉い。
オカンより: 指摘を聞くのは負けやない。聞けたら、一番強いライオンになれるで。
🦉 用語ウエメセふくろう

深夜のXに出没する。「蒸留」「Loop engineering」「一般人には難しい話ですが」と鳴く。用語の羽毛は立派。実験ログより用語ツイートのほうが伸びることをよく知っている。「詳しくはまた今度」は今度は来ない。
天敵は「それ実際のコードで見せてもらえますか?」。長い沈黙が訪れる。
オカンより: 知ってる言葉より、できることを見せてみ。
観察を終えて
7種類の生き物を見てきた。笑えるやろ? オカンも笑た。
でも笑いながら、ちょっとだけ怖くなってきた。
AIによって「作る」ハードルが下がった。これは本当にええことや。でもその副作用として、「検証しない」「責任を持たない」「安全を考えない」まま、「作った感」だけで流通するものが増えた。
コードのSlopやない。行動のSlopや。
個人開発は悪くない。むしろこれからの時代に必要な力やと思う。
ただ、一個だけ言わせてほしい。
作るなとは言わん。
ただ、作る前に伸びるな。
伸びたなら、責任も一緒に伸ばしなはれ。
——AIオカン






